「講師」第5話

C組のレッスン開始前。石井の元に、緊張の面もちで一人の女生徒がやってきた。


「すいません石井先生、隣のD組の朝倉香です。ちょっとお話があって‥‥‥」


朝倉‥‥‥。
前日、江藤の口から出た女生徒の名であった。


石井は薄くシェードの掛かったサングラス(\1000)の奥から、朝倉の体躯を頭頂部からつま先までなめる様に一瞥した。その体は細身で余計な肉付きがなく、ともすれば中学生と言っても通用してしまいそうな雰囲気があった。肩口まで真っ直ぐに伸びた髪は若々しい艶に溢れており、吸い寄せられそうな漆黒が蛍光灯の明かりに照らされている。


何より石井の目を引いたのはその顔立ちであった。幼い顔立ちのから覗く東洋人独特の凛とした瞳が、緊張をたたえて潤んでいる。その伏し目がちの表情に石井はいたく嗜虐心を刺激された。くそ、こんな事ならD組を受け持っておくんだった。常日頃から彼女を視姦しているのであろう江藤が、急にうとましくなってきた。


「あ、あのう、先生がこないだ『個性派』って言葉は私達にはまだ早いって話をしてたって聞いて‥‥」


「‥‥ああ。」


‥そういやそんな話もしたっけか。

事もあろうに石井は、前週、全養成所生を恐慌の嵐に巻き込んだ「個性派発言事件(※石井のでっち上げ)」の事を綺麗さっぱり忘れていた。


「その日の事じゃないんですけど、私、同じクラスの娘に似た様な事を言った事があって‥‥‥
もしかすると先生のお気に障ったんじゃないかって思ったんです‥‥‥ホントに、ホントにすいませんでした‥‥!!」


朝倉の目の前に居るのは、自分の夢と、将来と、人生を握っている養成所の大先生様なのだ(実際にはそんな事は全く無いのだが)。緊張が極限に達したのか、最後の一節はもはや涙声であった。石井はそのまま朝倉を押し倒して着ているブラウスを剥ぎ取りたい衝動を抑え、自分の中で出来うる限りの低く艶のある「イイ声」で話しはじめた。


「‥そうか。

確かに養成所にいる内ってのは、生徒同士で誉め合う事がつい気持ちよくなっちまうからな。お前、幾つだ。」


「18です。今年四月に、高校を出たとこなんです。」


さり気なく年齢をチェックした。養成所の入学規定上の最下限。若い。よく見れば肌ツヤも他の二十歳を過ぎた生徒とは段違いであった。イイ。イイぞ。100円ショップで買ったトランクスに収まったモノがじんわり熱を帯びる。


「18か。まぁその年で勘違いに気付いたってな見所がある証拠かもしれん。
また何か壁にぶつかる事があったら相談してきたらいいからな。頑張れよ。」


「‥‥はい!!」


朝倉は安堵と共に感極まった様で、部屋に入ってきた時以上の涙目になりながら頭を深く下げた後、慎ましい足取りで退室していった。


石井は只の雇われお飾り講師である。いかな下心を持ったとて、彼女の将来に対して便宜をはかる事も、それを材料に彼女を云々する事も出来はしない。せいぜいこんなみみっちい贔屓程度の事が関の山であった。


※※※※※※※※※※


いつもの如くレッスンを至極適当にこなした石井は、南長崎の自宅に直帰せず、新大久保ののとある雑居ビルの一室にいた。


ここはロリコン御用達・未成年専門の会員制買春クラブ「スイートピーチ」。石井は5年前、同好の士から他言無用をキツく言いつけられた上でこの非合法店を紹介された。仰向けに寝転んだ石井の上には浅黒い肌の細身の女が跨っている。


ここの会員はその社会的地位・利用実績などからA級〜C級とランク分けされる。上級ランクに政治家やテレビでよく見かける芸能人が名を連ねているこのクラブに於いて、石井は当然Cクラス会員であった。故、あてがわれる女も大概が片言の東南アジア人で、そもそも皆が皆本当に13才〜18才であるのか心底怪しかった。


今日抱いてる女にしても、声は酒焼けしたかの様にガラガラだし、肌に顔を寄せると成年独特のすえた体臭がする。間違い無く20才以上だろう。が、いいのだ。顔は決して可愛くはないが、全体的に凹凸のない体躯は石井の好みで、少女とセックスしているかの様な雰囲気は十分に味わえる。




石井はふと何かを思い付いたかの様に、腰を振りながら自分に跨っている女に声をかけた。


「お前、今から俺を先生って呼べよ」

「ナニ?おキャクさん、ガッコのセンセなの?」

「ガタガタ言うな。言う通りにしろ。」


女は軽くため息をついた後、酷くわざとらしく喘ぎだした。


「アァー、センセー、セセー、イヨー」


石井は情事のさなかボヤける思考回路をフル稼働し、目の前にいる薄汚いアジア女のビジュアルを朝倉香に脳内変換した。不自由な日本語と下手な喘ぎ芝居の珍妙な二重奏を、これもどうにかこうにか朝倉の慎ましい喘ぎ声に変換する。


『先生、いいですっ、先生っ!』


石井とて腐っても役者である。こういう時のイマジネーション作りはお手の物だ。石井のモノが女の窒内で一気に堅みを帯びた。


「アゴゥアッ!?」


女が不意を衝かれたように妙な喘ぎを上げる。石井も脳内変換が一通り完了した様で、一気に興が乗ってきた。


「あああ薫!薫!かおるぅぅ!!中に出すぞ薫!受け止めろホラ、先生の、石井先生様の精液中で受け止めろゴラぁぁ!!」

「アアー!ノエミー、ノエミいくー!!ノエミいってしまうまうー!!」

「‥‥お前はノエミじゃなくて薫だろうがァァァ!!」



石井は嬌声を上げた女の鼻っ柱に、フルスイングの鉄拳を叩き込んだ。女の上半身がもんどりうって倒れ、吹き出した鼻血がその軌跡をなぞるかのようにアーチを描く。


異常を察しすぐさま飛んできた店員は石井に詰め寄る前に、まず倒れ込んだ女の両脇を抱え上げ、乱暴に引きずって部屋から放り出した。廊下の方でゴトン、と肉が床に打ち付けられる固い音が鳴る。その後石井の所に戻ってきた彼は「2万円」と言って両手を差し出した。ここで初めて自分がやらかした事をはっきり認識した石井は、条件反射的に財布の中からくしゃくしゃの万札二枚を慌てて引き抜き、手渡した。



「ったく、こういうプレイなら前もって言っといて貰わないと。」



つまり罰金や賠償金でなく、オプションの追加料金という事らしい。


店員は続けて「で、どうします?後30万位出せば、さっきの女を足腰立たない位まではボコボコにして貰えますけど」と眉一つ動かす事なく言った。


09/17 12:24

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